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クサフグの半月周性集団産卵回遊

  • 2018/04/13

Summary

クサフグの集団産卵では,半月周性,潮汐性,日周性のリズムがその環境条件に合わせて複合的に組み合わさり,また体内時計と環境要因,生殖神経内分泌系が協調しあって,“絶妙のタイミング”で産卵回遊行動が起こることがわかってきた。

 クサフグは,5〜7月の大潮、すなわち新月と満月の日の前後数日の満潮前に,海岸のある決まった場所で集団産卵する。クサフグの集団産卵は日本各地で見られるが,魚が産卵場に現れる時間は場所ごとに厳密に決まっており,分単位で予測できる。筆者が産卵生態を調査してきた熊本県天草郡富岡の巴湾には,砂嘴の基部と先端に産卵場が2ヵ所あり,幅10mほどの産卵場1には,最大で1000個体もの大群が現れる。これまでのさまざまな分子生理生態学的な研究の結果,クサフグの集団産卵では,半月周性,潮汐性,日周性のリズムがその環境条件に合わせて複合的に組み合わさり,また体内時計と環境要因,生殖神経内分泌系が協調しあって,魚が海岸のより潮位の高い場所で産卵できるように,“絶妙のタイミング”で産卵回遊行動が起こることがわかってきた。

クサフグの半月周性集団産卵回遊

新潟大学理学部附属臨海実験所 安東 宏徳

 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.35 No.1 表紙より)

 

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