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ハエも考えて食べる

  • 2017/06/15

Summary

何を,いつ,どのくらい食べるのか。そのような意思決定のプロセスを介した摂食行動を昆虫も行っており,ショウジョウバエは,体内のアミノ酸レベルを感知し,アミノ酸に対して特異的に摂食を制御すると考えられている。

 何を,いつ,どのくらい食べるのか。そのような意思決定のプロセスを介した摂食行動を,昆虫も行っている。空腹になれば摂食が促進され,満腹になれば抑制される,というように摂食量が調節されるだけではなく,複数の栄養素に対する摂食行動が独立に制御されていることもわかってきた。糖を摂食して満腹状態であるショウジョウバエでも,アミノ酸を欠乏すると選択的にアミノ酸を摂食するようになるのである。

 2者選択嗜好実験によって,ショウジョウバエが2種類の食物のどちらを選んで摂食するか調べることができる。赤い食用色素で着色した糖溶液と,青い食用色素で着色したアミノ酸溶液をそれぞれ,ろ紙に染み込ませ,シャーレの底に配置する(右上)。そこにショウジョウバエ成虫を40匹程度入れ,2時間後に顕微鏡下で腹部の色を確認する。この場合,腹部の赤いハエは糖溶液を,青いハエはアミノ酸溶液を,また紫色のハエは両方の溶液を摂取したということである(左上)。加えて無着色のハエはどちらの溶液も摂食しなかったハエである。以上の分類より,それぞれの溶液の摂食率を算出する。通常の栄養状態であるハエと比べて,アミノ酸欠乏状態で飼育されたハエはアミノ酸溶液の摂食率が増加する。その一方で,糖の摂食率は両グループ間で変化しない。つまり,ショウジョウバエは,体内のアミノ酸レベルを感知し,アミノ酸に対して特異的に摂食を制御する仕組みを有しているということである。

ハエも考えて食べる

Leibniz Institute for Neurobiology  利嶋 奈緒子

イラスト:谷崎美桜子

 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.34 No.2 表紙より)

 

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