- 2010/5/1
Summary
社会性昆虫イエシロアリは、単独飼育で昆虫病原性糸状菌(カビ)に対して強い感受性を示す。
昆虫病原性糸状菌(カビ)によって病死したイエシロアリ(写真左)。蛾や甲虫類の病死虫を野外で見かけることはあるが,社会性昆虫の野外における病死虫の報告はまだ聞いたことがない。これらの感染菌は土や水の中など自然界に広く分布しており,写真の菌はMetarhizium 属菌という。この菌は楕円形の分生子(カビ胞子)を作り,分生子は成熟すると黒っぽい色素(写真の深緑部分)を出すため,一般に黒殭(きょう)病菌と呼ばれている。生物防除剤としても汎用される一般的な昆虫病原性糸状菌であり,単独飼育のシロアリはこの菌に対して強い感受性を示す。しかし,集団飼育を行うと感染率は大きく低下する。
京都大学生存圏研究所 柳川 綾
(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.27 No.2 表紙より)