- 2008/3/12
Summary
イソアワモチは多種類で多数の光受容器からなる特異な多重光受容系を持つ。
イソアワモチは不思議な動物で,全身で光をキャッチしている。海岸の干潮帯の岩場の上をゆったり這い回る。移動する方に伸ばした触角の先端に柄眼がある(左上図)。外套の要所に伸縮する担眼突起が塔のように立ち,そこで背眼が周囲を見張っている(右下図)。この2種の眼は黒い眼点として肉眼で認めることができる。さらに外表からは識別できないが体表全体の皮下組織に皮膚光覚細胞が夥しく散在する。背眼はユニークな脊椎動物型の眼で,網膜は繊毛型光受容細胞からなり,無脊椎動物では珍しい過分極性の光応答を示す(下中央図)。一方,背眼の中央部にあるレンズは光学的レンズであるとともに,感桿型光受容細胞で,脱分極性光応答を示し(下図),背眼は2つの異型の光受容細胞をもつ特異な眼である。
弘前学院大学看護学部 片桐 展子・片桐 康雄
(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.25 No.1 表紙より)