- 2008/1/7
Summary
学会の歴史を振り返り、私達もそれに負けないものを次世代に引き継ぐ責務のある事を、本学会の皆さんと確認したいと思います。
本学会の会員が2名しかいない本研究室で、どのようにして学会本部を進めて行くのか、会長に選ばれた時悩みました。しかし、沢山の方々が協力してくださることが分かり、本当に嬉しく、腹がすわると同時に、身が引き締まる思いです。曽我部会長が一期在任でしたので、多くの現幹事の方々に留任をお願いし、快く承認いただきました。ありがとうございます。
また、新任の代表幹事として、庶務を中川氏(九工大)、会計を山脇氏(九大)、編集を針山氏(浜松医大)にお願いしています。既に、内々の打ち合わせ会や実際の業務に働いてもらっています。更に、学会の活性化のための色々な相談のために、深田氏と神崎氏に副会長をお願いしています。心強い限りです。
私は、県立の小さな大学で、学生が「先生は中小企業の社長さんで、社長兼小遣いさん。」と言うような状態で、小研究室を切り盛りしてきました。掃除係、飼育係、蒸留水係、会計係、コンパ係など、なんでもありの業務を学生たちと楽しくやって参りました。しかし、学会を進めて行くとなると、皆さんに色々な業務をお任せしないといけません。「小泉、会長となったからには、皆に仕事をしてもらわなければいけない。そのことを肝に銘じておけよ。」と先輩方から言われています。
どうも、今までの体質から脱却するのはやさしくありません。しかし、それぞれの担当をこなしておられる方々からの様々なメールに接していると、熱心なやる気をいつも感じます。そうです、皆はやる気一杯なのです。もっと、皆さんに任せて、頑張っていただくことも大切なのだと、少し分かりかけてきています。このような気持ちは、本当に嬉しく、また、今までとは違った深い責任を感じます。
私は、学会に対してどのようなことができるでしょうか。まず、出版事業を進めたいと思います。今後の2年間の間に、全5巻のシリーズ(「動物のたくみな生き方」(仮称))の出版を終えたいと思います。本学会の沢山の興味深い研究の数々を一般の人にやさしく紹介したいと思います。幸い共立出版が引き受けてくれて、1月中には全著者に執筆依頼が届くはずです。酒井・曽我部・寺北・吉村の諸氏と小泉を加えた出版企画委員会で進めています。
内容的には、光生物学(寺北・蟻川担当)、昆虫を中心にしたニューロエソロジー(酒井担当)、運動系 (吉村担当)、学習・可塑性(曽我部担当)、神経系の多様性(小泉担当)の5つの巻を考えています。各巻15名程度が予定されていて、まさに学会の総力を結集した事業になることと思います。皆様のご協力よろしくお願いします。
動物学会の方から、「21世紀の動物科学」(全11巻、培風館)が出版されました。数ヶ月の内に、全ての巻を出すことができてとても喜んでいます。これは、どちらかと言うと、研究の歴史、著者の研究に対する思い入れ、自分の研究を中心に、次世代の動物科学を担う若い人たちへのメッセージの意味合いが強かったです。(これは、30年も前に動物学会が東大出版から出た「現代動物学の課題」(全8巻)の名著の影響大です。)今回私達が目指しているのは、学会員のみを対象ではあまりにマーケットが小さいので、もっと、一般の方々に私達の分野の面白い話を紹介すると言うものです。動物学会とはまた一味違った出版ができればと思っています。曽我部氏が経験を持っておられて(「ニューバイオフジックスシリーズ、共立出版」)るので、お力添えをいただければと願っております。
次に国際学会があります。以前、高橋氏を大会委員長に1991年に東京都立大学で行われた素晴らしい国際会議(第3回)を思い出します。今回は、平成23年(2011年)に予定されていて、国際会議開催準備委員会(曽我部委員長)で準備が進められています。そう先のことではありませんので、学会としても委員会を後方から全力支援したいと思っています。会員の方々にも色々ご協力をお願いしなければなりません。又、会員の方々が国際会議を自分に役立つ会ととらえて、色々なことを計画し、利用していただけると嬉しいです。そのようになるように学会本部としては努めないといけないと思っています。皆さんのご意見をお聞きしたいところです。
年会については、本年(平成20年)は、北海道大学で7月19日から21日の予定で行われます。高畑氏を中心に準備が進められていて、若手については特に安い参加費が考えられているようです。若手の方々の新入会と参加をお願いしたい所です。色々と新しい施行など工夫が凝らされた会になりそうです。会員の皆様の参加をお願いします。
翌年の平成21年度は、比較内分泌学会との合同大会になりそうで、大阪地区での開催が予定されています。大阪市立大学の沼田・寺北・志賀・小柳の諸氏に色々な準備をお願いしています。平成19年10月11日~13日に日光で行われました比較内分泌学会の総会では、そのような方向が了承されています。両学会は色々な意味で似ていて、規模も同じ位ですし、どちらもcomparative biologyです。両学会に所属している会員も少なからずおられます。(しかし、一方で出版に特色のある比較免疫学会、会誌に特色のある我らが学会、それぞれの独自性もあります。このことも大切なことかと思います。)
両学会がお互い刺激合える関係になればと思っている私としては、合同大会のようなものも時には必要と思います。それで、全評議員の方々へ事情説明のメールを現会長、新会長、現行事担当幹事(山岸氏)の連名で配信しましたが、ありがたいことに特に異論は届いていません。何せ新しい試みですので、準備委員会の方は大変なことと思いますし、会員の皆様にも色々ご迷惑を掛けることもあるかもしれません。皆さんとの率直な意見交換で難問を克服したいと思います。
平成19年は、HPのリニューアル、会誌のJ-STAGEへの登録など学会のWeb化は、竹内ネットワーク担当幹事を中心に格段に進みました。若手の活性化は、伊藤氏を中心に将来計画委員会で熱心に対応いただいています。CBPへのAbstractの掲載の問題、会誌の冊子体の発送問題など、インターネットなどの発達に伴って、私達の学会も有効に変身して行くための問題提起、議論も必要かと思います。
思い返してみれば、動物生理学シンポジウムの第1回大会が昭和50年(1975年、ちょうど私が福岡女子大学に赴任した年です。)東京の日本都市センターでおこなわれた時の会場にみなぎっていた熱気を今でも鮮明に思い出します。そして、第1回日本動物生理学会が昭和54年(1979年)に札幌市教育文化会館で開かれました。そして1990年に高山市民文化会館で学会名を比較生理生化学に変更した第1回の大会が開かれています。
この学会に関しては、桑原万寿太郎、吉沢透、原富之、森田弘道、久田光彦、山口恒夫、吉田正夫氏など沢山の尊敬するbig nameが並びます。特定研究も「動物行動の発現機構」(森田弘道代表)や「微小脳システムの適応的設計」(高畑雅一代表)などが思い出されます。この学会は、例えば昆虫の神経生理・感覚に関しては、すごい研究貢献・歴史があります。
元日にあたり、このような歴史を振り返り、私達もそれに負けないものを次世代に引き継ぐ責務のある事を、本学会の皆さんと確認したいと思います。
比較生理生化学会万歳。 (平成20年1月1日、福岡にて)
小泉 修
日本比較生理生化学会 会長 (2008-2009, 2010-2011)
福岡女子大学人間環境学部 教授