学会組織

会長挨拶 (2006-2007)

  • 2007/2/21 

Summary

皆さんの“なぜこんな生き物がいるのだろう!?”という驚きとその不思議を研究するのが日本比較生理化学会です。

 皆さんは、海や山、あるいは図鑑やテレビを通して出会った多種多様で奇妙な動植物を見て、“なぜこんな生き物がいるのだろう!?”という驚きと不思議を経験したことが一度ならずあるはずです。実は地球上で最も不思議な存在は我々自身なのですが、まさに我を忘れて、自分以外の生き物の形や行動に興味を抱く本能が“ヒト”にはあるようです。しかし、その興味や感動も押し寄せる日常の中でつい忘れがちになります。ところが世の中には、その感動を忘れられずに、一生の仕事にしてしまう人達がいます。そのような純粋で酔狂な人々の集まりが日本比較生理生化学会と言って過言ではありません。この学会の特色は、“比較”の名が示すとおり、“多様な動物を対象に、その形態や機能・行動にどのような意味があるのか、そしてそれがどのような仕組みで実現されているのかを、分子レベルを含めた多角的な手法と視点から解き明かす”ことにあります。その成果は、生物の多様性と共通性の起源と意義を理解し、自然との共生の途を見つけるという人類の大きな夢に繋がっています。ずいぶんとロマンチックで基礎的な学問に見えますが、必ずしもそれだけではありません。例えばリスの冬眠を研究している会員がいます。その仕組みが分かってヒトに応用できたらどうなるでしょう?冷凍保存よりもはるかに安全な延命が可能になるかもしれません。また、昆虫の鋭敏な匂い感知機構を元に、新しい匂いセンサーや匂い探知ロボットを作っている会員もいます。さらに蜘蛛毒の成分を分析して新規治療薬を開発する試みもあります。色々変わった生物を扱っているために、常識を越えた発見、発想、発明に繋がる可能性を持った学問でもあるのです。蝶の鱗粉の研究から七色に変化する塗料が発明された話はよく知られています。その意味で、理学や農学の分野だけではなく、医学、薬学、工学を始め、新製品の開発に意欲的な企業の方々にも、是非興味を持って日本生理生化学会に参加して頂きたいと思っています。最近ホームページを刷新して、“Web版「動物の生きるしくみ事典」”という企画も始めましたので、是非お立ち寄りください。また、比較生理生化学のシリーズ物の出版計画も進行中です。入会金(1000円)と会費(一般、6000円/年;学生、4500円/年)は低廉であるにも関わらず、会員になれば、大変充実した機関誌「比較生理生化学」(年4回)もお手元に届きます。

本学会は、1978年に「日本動物生理学会」として発足し、1989年に「比較生理生化学会」と改称して現在に至っています。会員数約500名の小粒な集団ながら幅広い分野をカバーしており、特に海外の研究者との交流や国際化を重視しています。例えば、国内大会では英語によるシンポジウムを恒常化し、母体とする雑誌を英国のComparative Biochemistry and Physiology (Elsevier社)としております。さらに、積極的に海外での国際学会を共催し、第5回国際比較生理生化学会議(1999年)では多数の会員がカナダに集結して本学会の力量を国際的に認めていただく契機となりました。2007年8月にブラジルで開催される第7回国際比較生理生化学会議においても、本学会は中心学会の一つとしてその準備に参加しています。ブラジル大会にも、会員の皆様が数多く参加していただくことで、本学会が一層国際的に認知される学会へと発展するものと期待しています。その4年後の2011年には本学会がホストとなって第8回国際比較生理生化学会議が中部地区で開催される予定です。ブラジル大会終了直後から、4年間にわたって本学会が議長国として世界の比較生理生化学を牽引していく役割を担うことになります。これらの国際イベントをてことして、学会員、特に若い学会員の皆様の研究がより活性化して発展することを願っています。

 

曽我部 正博
日本比較生理生化学会 会長  (2006-2007)
名古屋大学大学院医学系研究科 教授

 

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